學問のかたち 在線電子書 圖書標籤: 海外中國研究 思想史 日本 日文原版 小南 學術史 曆史 一郎
發表於2024-11-22
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讀過平田老師那篇
評分讀過平田老師那篇
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思想史が、それぞれの時代を代錶する思想傢たちが築き上げて來た思想の體係を解説し、それを分析することを中心にして記述されるのは當然のことであろう。各時代に固有な思想的な課題が、個々の思想傢たちの思索を通して、結晶化され、その解答が提示されているのである。思想傢たちが、苦悩を通して築き上げて來た思想の體係は、歴史の流れの中でその內容が検討され、改変が加えられつつ、時代を越えて継承されて來た。一人の思想傢が思索を行なうのは、前代から受け継いだ思想的な遺産の基礎の上に立つだけではなく、その時代に固有な社會的環境の中においてであった。たとえ孤高の思想傢がいたとしても、孤高という姿勢を取ること自體が、そうした態度を通して、固有の社會と関わりあっていたのである。
この論文集は、中國の思想傢たちが思索を行なって得た、その精華を論ずるよりも、思索を行なう際の基礎條件の方に目を注ぎ、そうした條件が、時代の流れの中でどのように変化し、それが個々の時代の思想の具體的なあり方にどのように関わりあっていたのかを考えようとするものである。思想的営為をその基礎で支えて來た文化的要件には、多様な性格のものが存在していたであろう。精神文化的要素の占める割りあいの大きいものもあれば、社會製度的なものもあった。ここでは、特に思想の場を取り挙げて、検討を加えてみたいと思う。言うまでもなく、思想傢たちの思索は架空の場でなされるわけではない。それぞれの社會に特徴的な思索のための場があり、またその成果を公錶し、伝承するためにも固有の場や形式があったのである。
そうした場や形式を離れて、思索はあり得なかった。思想的営為の背後にあったそうした要件を把握することによって、思想史の記述を、より人間的な、血の通ったものとすることができるはずなのである。
この論文集では、問題をさらにしぼり、知の伝承・伝播の問題を中心に據えて、その知の継承の具體的な場であり、製度的な枠組みでもある學問のあり方を見てみようとした。それぞれの時代の教育・學習の具體的なかたちが、その時代の思想のあり方にさまざまな影響を及ぼしていたに違いないが、その相関の様子を考えるための前提として、學問の場という基礎的部分に目を注ぎ、それぞれの時代に特徴的な様相を検討しようとしたのである。
小南一郎「中國古代の學と校」は、中國における學校製度の形成について、新石器時代から秦漢時期までを概観したものである。禮関係の文獻の中から、部族社會にまでさかのぼるであろう教育の様相を伝える資料を探して、そこに記された郷村の教育製度の中に、中國の學問の原型となるものがあり、おそらく戦國時代ごろまで、そうした古い要素が、大きく変貌することなく、伝えられていただろうことを論じた。
辛賢氏の「漢代経學の相貌――宇宙論的「知」の形成」の論文は、漢代の人々の思考のかたちを、より基礎的な部分で見ようとしたものである。特に漢代の易學が、象數易と呼ばれる占蔔的要素の強いものであったことの意味を追及している。漢代の易には、 現実的な事象の吉凶を占うという性格が強く留められていた。こうした漢代の易學の背後に、この時代の人々に特徴的な〈天〉と〈人〉とを結ぶ観念があったと辛氏は指摘する。
吉川忠夫氏「六朝時代における傢學とその周辺」の論文は、この時代に特徴的な學問のありかたについて、傢學という視點から検討を加えている。六朝時期になると、門閥貴族體製の文化的な優位を反映して、一つの傢係の中で學問を継承する、「傢學」と呼ばれる學問のあり方が顕著になる。まず順陽の範氏が継承した傢學の內容を検討し、範寧の「春鞦穀梁伝集解」という注釈書が、範氏一族の人々、およびその周辺にいた門生故吏たちの共同作業として作り上げられたことを確認する。加えて、この時期の學問の伝承は、漢代の師法の継承を中心とする學問に比べて、より開かれたものであり、範氏の傢學の伝統は、「理」を追及する中から、仏教信仰などにも繋がるものであったことを指摘する。
船山徹氏「梁代の仏教――學術としての二三の特徴」の論文は、仏教史の流れの中で、梁代という時代が具えていた特徴的な性格について分析を加えている。インドに原典のある仏教経典の漢訳作業は、五鬍十六國時代、後秦の鳩摩羅什あたりが頂點となり、梁代になれば、さらに下った時期に中國に伝來して流行することになる唯識思想の論書と密教経典とを除き、主要な経典の漢訳はほぼ終わっていた。仏教活動の中心が、訳経から、訳された経典の整理と咀嚼、理解へと移っていたのである。こうした學問的仏教の進展と対応して、梁代ころになると、もっぱら仏教関係書を収蔵する図書館を指す言葉として、経蔵・経颱・般若颱などの語が用いられるようになると、船山氏は指摘する。
小島毅氏「宋代における経學と政治――王安石と硃熹」の論文は、大きくいえば宋代の學問として一括できるが、方嚮性に違いが見える、王安石と硃熹との二人の學問のありかたを、両者の経書注釈を通して検討したものである。これまで、王安石の學問は経學、硃熹の學問は道學と呼んで區別をされることが多かった。しかし、小島氏は、まず、両者の學問が基本部分で共通していたことを確認する。王安石の経典解釈は、天子を輔弼する宰相としての立場を基本としたものであり、硃熹の解釈は、支配者を善導することをめざして意見を述べる士大夫の立場を基本とするものであって、王安石と硃熹との経典解釈の違いは、両者の政治世界での立場の違いを反映するものであったと、小島氏は理解する。
鶴成久章氏「近世中國の書院と宋明理學――「講學」という學問のかたち」の論文は、書院の具える様々な機能(蔵書のための施設という性格など)の中でも、特に重要なのは「講學」活動であったとして、その內容を詳しく分析している。
宮紀子氏「モンゴル王族と漢児の技術主義集団」の論文は、知の空間的(地域的)な伝播の問題に注目している。しかもその知は、儒傢の経典に由來するものではなく、主として自然科學的なものであった。醫學などに代錶されるように、直接的な有用性を具えた、技術的な知識なのである。そうした技術的知識を持つ人々を、モンゴルの王族たちは、爭うようにして自分の手元に置こうとした。この時代に勢力を伸ばした新しい道教、全真教の教祖たちも、こうした技術的知識に深く関わっていたと宮氏は指摘している。
三浦秀一氏「人法兼任の微意――明代中後期の科挙および督學製度と思想史」の論文は、従前の見方に訂正をせまるものである。三浦氏は、明代の科挙をめぐる製度的な問題や具體的な科挙試験問題の模範解答(程文)を検討して、そこに明代の思想傢たちに課せられた問題が反映していることを確認する。とりわけ、試験の実務にあたる督學官たちの、思想的な立場からの使命感と職務の実態との乖離に由來する苦悩を分析し、そうした苦悩とその剋服との中に明代の思想の具體的なありかたを見ようとしている。
水上雅晴氏「清代學術と幕府――編纂と代作の狀況を中心として」の論文は、當時の有力者たちが開いた幕府に幕友としてそれに関わった學者たちの実態を詳しく分析している。幕府の府主が學者たちを自分のもとに集めたのは、そこでの學術活動の中心が書物の編纂にあったからである。幕府で行なわれた編纂作業の中心は、地方誌の編纂、失われた書物の復元(輯逸)、古典のテキストの校勘などにあり、府主の政治的立場は資料の収集を容易にし、集まった幕友たちの共同作業が、學術研究の基礎資料となるような書物を次々と生み齣した。
平田昌司氏「「仁義禮智」を捨てよう――中央研究院歴史語言研究所の齣現」の論文は、思想的課題に中國の人々がどのように対応したのかを、歴史的な動きの中で、詳しく分析している。西洋の學術思想と中國の伝統的な思想とのもっとも大きな違いは、西洋の學術が自然科學を基礎に置き、そこで探求される真理は善悪の観念に関わらないとされるのに対して、中國の學問は基本的に人間的・社會的な善(倫理)を求めてなされるものであったことにあるだろう。もちろん中國にも自然科學的な學問の伝統もあったが、學問の主流は人文學にあり、そこでの探求の方嚮は、倫理的価値観と切り離せないものであった。西洋の自然科學の持つ體係性や論理性に引かれて、二十世紀の初頭のころ、自然科學の教育を受けた、著名な知識人は少なくない。ただ、かれらの多くが、やがて自然科學の學問から離れてしまう。中國の「國粋」尊重へもどってしまう者たちもいた。そうした中で、自然科學的客観性を保持しながらも、中國の文化伝統へ目を注ぐべく、民衆的文化を対象とする學問が築かれた(平田氏は、こうした流れを〈土の聲を聴く〉と錶現している)。中國の古典も、さかのぼってゆけば〈土の聲〉に由來すると考えるのである。
研究者は、學問という迴路を介して社會とつながっている。その學問は、それぞれの時代に固有な、特殊なかたちの學問なのである。研究は「実事求是」をスローガンとするとはいえ、「事」の主體をどこに置くか、求められる「是」の內容について、どのような點を重視するのかなどについては、時代の価値観が色濃く反映することになる。我々の學問も、現在という時代の中に囚われた學問であるのかも知れない。そのようにみずからの學問を客観視することは、むしろ必要なことであるだろう。しかし一方で、學問の歴史を詳しく見るとき、時代的な製約の下に縮こまるだけでなく、それを乗り越えようとする人間の精神の羽ばたきをも、そこに感じ取ることができるように思うのである。
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