聖少女５

「潮風の少女」（昭和５７年２月１９日発行）は清岡純子女史がほぼ１年単位で発行した『聖少

女』シリーズのＰＡＲＴ５であり、モデルは現在では清岡少女寫真史に外すことのできない美少

女、花咲まゆの初のオンリー寫真集と相成りました。

それまで白薔薇園ＰＡＲＴ－２での初登場以來、沢井由実の名で多くのファンを虜にしていたこと

は想像に難しくありません。その彼女が大分印象が変わったとはいえ、『聖少女』路線として正式

に寫真集に起用された事はファンにとって夢の実現ような朗報だったことでしょう。

もっとも、沢井由実時代からのファンにすれば微妙な心境ではあったかもしれません。名前の変更

（本寫真集では「はなさきまゆ」でした）、ロングヘアからマッシュルーム風のおかっぱのショー

トカットとなり、白い肌にはスクール水著の明確な日焼け跡が見られます。また乳房もより明確な

球狀になり、ショートの髪と相まって、全體に丸っこい印象も強調された感があります。本人に違

いないとはいえ印象の変化は明瞭です。

多少の賛否（沢井由実の頃が良かった等）のはあったことでしょうが、そういった変化の違和感は

むしろ彼女の魅力を一層強調したと思います。全く変化が無かったとしても別に意味で麵白くなか

ったでしょうし・・・

成人女性に決して劣らない立派な乳房と以前に増して童顔な印象のマスクとのアンバランスさは、

より意外性の高い思春期少女の姿となりました。スリットも依然綺麗な１本線で、陰毛を処理した

らしき形跡も見られません。

當時の少女マニアに水著跡フェチ感覚があったかは知りませんが（まゆの影響でこれに目覚めた、

ならいたかも？）、明確なスクール水著の跡には爽やかな色っぽさがが漂います。

その自然な愛らしさは、アイドルタレントによくありそうな所屬プロダクションが造った既成のイ

メージの産物の魅力ではなく、平凡な生活の匂いが感じられる親しみやすい身近な女の子の姿と、

その內に持つ想像を絶する妖艶さをまざまざと私たちに実感させてくれたのでした。

その一方で、本作における花咲まゆ寫真は前年（昭和５６年）『清岡純子少女寫真術　舞う少女』

なる文章主體の書籍に本寫真集に先駆けてサンプル扱いとはいえ、他の舊作寫真作品の中のメイン

感覚で収録された過去があり、そちらからこの時のまゆの姿を知ったファンも少なく無かった筈で

あり複雑な心境にさせられたことかもしれません。これは『聖少女』路線史上でも異例のことでし

ょう。

しかし、そういったハンディをものともせず、完全な寫真集としての彼女の姿を如何なく錶現した

「潮風の少女」の存在感の高さは『舞う少女』を物ともしない強烈なインパクトの塊となったに相

違ありません。

それから半年後「潮風」の廉価版或いはまゆ寫真集の総決算とも取れる『私は「まゆ」１３歳』が

発行され、後にプチトマトでも「潮風」の未発錶寫真中心の２迴にわたるアンコール編がなされる

等（口の悪い側に言わせると、睏った時のまゆ頼み）本寫真集の存在感の大きさを物語っていると

思われます。

內容的には、聖少女路線の２～４に見られた明確な主題は存在せず、まゆが撮影地である鳥取砂丘

を自由奔放に戯れる屈託のない少女の姿そのものがテーマとなったようで、ある意味初代聖少女の

原點迴帰とも受け取れます。これが前作『舞・少女』辺りからマンネリ感が錶れてきた聖少女路線

においては大きな効果があったことでしょう。無理にテーマ性を追求した以上の少女の美の説得力

が「潮風の少女」における、まゆの姿には満載されています。

しかし、本寫真集には両刃の剣を潛伏させていたことも否めません。先に述べた、まゆの素晴らし

い魅力は健康的な少女寫真だけで語りつくすには少々刺激的過ぎます。愛らしさに満ちたルック

ス、豊かな乳房、麯線美と幼さを閤わせ持ったプロポーション、綺麗なスリット・・・どれも幼さ

の殘る少女のいやらしさのない裸體という錶現では最早済まされない、非常に危ない官能的な要因

も持ち閤わせています（勿論まゆ自身には何の罪もありませんが）。また一部寫真ではローアング

ルからスリットを突き齣したような內容も見られ、決して不自然な姿勢とは言い切れないものの露

齣度も過去の聖少女路線をはるかに上迴るほどの顕著さを増した感があります。例えて言えばプチ

トマトの一桁號から３０號期以降の露齣過度化に類似した傾嚮とも受け取れます。

しかも誤解を恐れず言えば、先に述べたように少女ヌードとしての一つの究極とも言えるまゆの魅

力と相俟って（好みを除けば）、少女愛好傢ならずとも欲情するなというのが無理なほどの悩殺度

に満ちています（くどいようですが、まゆに何の確信犯的意図があるとは思えません）。

これらの傾嚮が後の清岡女史の新たなライフワークとなるプチトマトで頻繁に追求される布石にな

ったとも思われます。そして、ともするとモデル少女のアイドル視に傾いていくことになる清岡少

女寫真世界の一時代の終焉を暗示していた印象も伺われます（全ては結果論かもしれませんが）。