〔時代屋の女房〕銀色の日傘をさし、ピンクのTシャツを着て、夏の盛りにやってきた真弓が、骨董店<時代屋>の女房として居ついたのは5年前。その真弓が、4度目の家出をし、6日が過ぎた・・・。東京の一隅にひそむ、書割りのような二階家を舞台にした、男と女の静謐な愛の持続。そして、深夜に生気を帯びる男たちの、苦い交流。 〔泪橋〕かつて、女がらみで人に追われ、ひと月ほどもかくまってもらった鈴ヶ森刑場址近辺の家を訪ねてみると、同じ部屋に今度は、若い女がかくまわれていた・・・。部屋を提供してくれる不思議な老人二人と御仕置場の風にいざなわれ、そそのかされるようにして、<仮名の男女>が演じ合う、夢幻劇にも似たひと夏の恋物語。 解説・椎名誠
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