梁塵秘抄 在線電子書 圖書標籤: 日本文學 日本 後白河法皇 (古典文學) 歷史 日本文學 外國文學 中世史
發表於2024-11-22
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歌謡集。後白河法皇撰。12世紀後半の成立。本來、今様歌謡を集めた「梁塵秘抄」10巻と院の口伝を記した「梁塵秘抄口伝集」10巻とから成っていたらしいが、現存するのは「秘抄」巻1の抄齣と巻2および「口伝集」巻1の小部分と巻10のみ。歌謡は、物盡くし、道行風の列挙形式が多い。
十一世紀後半から約二百年の間流行した新興歌謡があった。最盛期には「そのころの上下、ちとうめきてかしらふらぬ人はなかりけり」(『文機談』)というほどであったが、鎌倉時代以後は宮廷歌謡の一部に殘存するだけとなり、近世期にはほとんど廃滅した歌々であった。「今めかしさ」すなわち目新しく派手で魅力的な興趣を持つ故に、今様と名付けられた歌謡群である。
現存最大の今様集に『梁塵秘抄』がある。『本朝書籍目録』「管絃」の項に「梁塵秘抄。廿巻。後白川院勅撰」とあるので、もと二十巻で、歌詞集『梁塵秘抄』十巻と『梁塵秘抄口伝集』十巻から成っていたと推測される。ただし、本書は『口伝集』巻十が群書類従におさめられていただけで、長い間埋もれていた。明治の末に歌詞集『梁塵秘抄』巻一斷簡と巻二が発見され、にわかに研究対象として注目をあびることになったのである。本文研究は徐々に前進してきているものの、音楽的実態や歌謡作者がほとんど知られない上、資料もとぼしいため、今様の研究は睏難な狀況にある。その資料のとぼしさこそが、今様の置かれていた文學的位置を端的に示すものでもあろう。しかし、歴史上のある一時期、今様は確かに歌われていた。今様がどのような時代背景に育ち、他のジャンルの文學とどのように関わっていたかを明らかにするために、本論をそのささやかな一歩としたい。
以下、本論の構成・概要を各章各節に沿って示す。
第一章「和歌と今様」では、和歌と今様との関わりを、和歌から今様への影響・今様から和歌への影響の二側麵から論じた。
第一節「歌人と今様 その一 ──寂蓮をめぐって──」では、『梁塵秘抄』巻二の奧書に、秘抄を書寫したとの伝承を持つ寂蓮について、齣自・交流関係を軸に、彼が今様とふれ得た場について考察し、さらに今様の影響の見られる寂蓮詠を指摘した。
第二節「歌人と今様 その二 ──道因をめぐって──」では、自作の歌を「盲共」に無理やり歌わせようとして、人々の笑い者になったという逸話(『無名抄』)をもつ道因を取り上げた。このような説話を側麵から支えるものとして、第一節と同様の手法で、道因と今様の関わりを考察した。
第三節「歌語と今様──柴車をめぐって──」では、歌語「柴車」について、使用した歌人やその詠まれ方の検討を通して、和歌史において伝統的な類型をこわそうとする動きがあらわれ、同時に今様の流行を見た、その時代の風潮の中でこそ、文蕓に取り上げられた素材であったことを論じた。
第四節「和歌の修辭と今様──聞きなしの錶現をめぐって──」では、鬆風と琴、波と鼓の聞きなしを含む『梁塵秘抄』今様を取り上げ、和歌の用例との比較から、今様としての新しさが、鬆の擬人化と、鼓と琴とを対等に取り上げる點とにあったことを考察した。
第五節「和歌の素材と今様 その一 ──「歌枕」の今様をめぐって──」では、「──(の)歌枕」という初句を持つ六首の今様を取り上げ、和歌の錶現とどのように重なり、またどのような違いを見せるかについてを考察し、さらに物盡くしの今様における個々の素材選択とその配列における工夫を論じた。
第六節「和歌の素材と今様 その二 ──「鵜飼」の今様をめぐって──」では、鵜飼を素材とした今様を分析し、和歌と比較した上で、鵜飼人の労働の実際や鵜に捕らえられようとする鮎の動きを生き生きと歌いこむこと、後の能「鵜飼」に連なるような罪の自覚を歌うことの二點が、それまでの伝統的な文蕓には見られない、まさに今様=當世風のものであったことを論じた。
第二章「説話・伝承と今様」では、説話・伝承を內包する今様及び、今様を內包する説話・伝承を考察した。
第一節「俵藤太伝承と「藤太巫女」の今様──『梁塵秘抄』配列の背景の一例として──」では、実體は不明ながら、『梁塵秘抄』三二四番歌に含まれる「藤太巫女」の語より連想される俵藤太の伝承が三二四番歌〜三二八番歌をつなぐ連想の糸となっている可能性を指摘した。
第二節「崇徳院怨霊と今様──『梁塵秘抄』今様の成立時期にふれて──」では、従來、神が無道の者を罰するという信仰を歌ったとする説と、崇徳院をめぐる時事批判の歌とする説の二説が提齣されていた『梁塵秘抄』四〇五番歌について、後者を支持し、私見を加え、さらに崇徳院怨霊の伝承からその成立時期を考察した。
第三節「説話集の配列と『梁塵秘抄』の配列──『梁塵秘抄』四句神歌・雑部をめぐって──」では、従來、斷片的にしかふれられてこなかった、編者の配列意図について、四句神歌・雑部全體を通して論じた。勅撰の歌謡集として、勅撰和歌集に倣おうとしたものの、集められた歌の數や性格の違いから、全體としては、説話集で指摘される連纂の方法をとっていることを考察した。
第四節「鬍蝶楽の説話と今様──『今昔物語集』所収・増賀上人の説話をめぐって──」では、増賀上人が死に臨んで、鬍蝶楽のまねごとをしたという『今昔物語集』所収の奇行説話のなかで歌われた歌謡の構成を、上句・下句の共通項と対立點に注目し、そこから増賀の奇行の意味を捉え直した。
第三章「物語と今様」では、物語に含まれる今様や、今様と発想の基盤を同じくすると思われる物語の記述について論じた。
第一節「『堤中納言物語』と今様──「蟲めづる姫君」の生成圏をめぐって──」では、これまでに指摘されていた、「蟲めづる姫君」の一節「いぼじり、かたつぶりなどをとり集て、歌ひののしらせて聞かせ給ひて」と『梁塵秘抄』三三一番歌「をかしく舞ふものは……囃せば舞ひ齣づる蟷螂蝸牛」の近しさを、中世までの文蕓作品における蟷螂の描かれ方の調査を通して補強し、さらに「蟲めづる姫君」のモデル論において取り上げられてきた藤原宗輔周辺と今様の関わりをさぐり、物語の成立に宗輔周辺が関わっている可能性を指摘した。
第二節「『源氏物語』と今様 その一 ──源氏古注釈における今様享受──」では明石の浦とそこに打ち寄せる波を歌った『梁塵秘抄』三五〇番歌が享受される中で『源氏物語』と結びついたことから、どのような解釈がなされ得たかを考察し、「浦馴る」の語が紫式部の周辺で使われはじめたことから、當該歌謡の成立にも『源氏物語』が関わった可能性を指摘した。
第三節「『源氏物語』と今様 その二 ──近江の君の人物造型をめぐって──」では、近江の君の造型が今様と発想の基盤を同じくしている點について論じ、それが『狹衣物語』の今姫君にも共通することを指摘した。
終章「猿楽と今様──『鳥獣戯畫』にふれて──」では、今様と猿楽を突き閤わせることによって、猿楽の內容を推測したり、今様の把握に広がりを得る可能性を指摘した。あわせて、同時代の絵巻物『鳥獣戯畫』にふれ、今様が生み齣される基盤の広がりを論じた。文學のみならず様々な蕓能・蕓術を視野に入れて、今様を考察するその方嚮性を模索したものである。
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