BRUTUS (ブル-タス) 2012年 4/15號 [雜誌] 在线电子书 图书标签: 大友克洋 设计
发表于2024-12-24
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「線の1本1本に呪いをかけるんですよ、呪いを」。ある日の大友克洋は言った。笑ってはいるが、まったくの本気。『童夢』や『AKIRA』に見られる、狂気染みた緻密な描き込み。線の1本ずつに気持ちを注がないと読者は振り向かない、というのが大友さんの持論だ。「ネオ東京」が爆発するシーンでは、一晩を費やして爆発の中心に「掛け網」で黒のグラデーションをつけていったという。「(かなり引いたアングルで描かれているので)この画だと分からないけど、爆発で何百万人という人が犠牲になっているんだ。しっかりと作品の中に入りこまないといけない」。当時、大ヒット中の『AKIRA』を担当していた講談社の由利耕一さんは、大友さんにこう言って凄まれたと語る。『GENGA展』のメインビジュアルを製作した河村康輔さんも、昨年末に大友さん本人から聞いた話を教えてくれた。「なるべく目を原稿に近づけて描く。カップや湯のみとか、日常生活にあるものが視界に入ると物語の中に入り込めないから」。卓抜した画力に加えて、自らが作中に入り込み、ある種の疑似体験をするからこそ、物語の緻密なディテールや圧倒的な迫力を表現することができるのだろう。結果、大友さんが創り出す世界に引き込まれ、読者は熱狂的な信者になる。4月9日から始まる『GENGA展』では、大友さんの呪いがかかった(!)3000枚の原画が並ぶ。大友ラバーズも、ビギナーズも、もれなく心奪われ、さらに信者は増えるはずだ。余談だが、大友さんの1973年のデビュー作『銃声』を読んでみたいと思い、国会図書館に足を運んだ。胸を昂らせながら、合本となった『漫画アクション』のページをめくっていく。……が、一向に「大友克洋」の名前は見つからない。よく見ると、合本の表紙には「事故本」の文字、そしてページがきれいに切り取られた跡。目次と照らし合わせると、切り取られた部分こそが『銃声』なのだ。呪いが強烈すぎるのも考えものである。(※注・私の犯行ではありません)。 ●阿部太一(本誌担当編集)
From Editors 2大友時代、井上時代。
「28歳ですか……スラムダンクの最後の方を書いていた頃ですね」と井上雄彦さん。少し遠くに目をやって、その頃のことを話し始める。目の前では大友克洋さんがにこやかに耳を傾けている。お二人は、これが初対面。井上雄彦さんの『スラムダンク』は当初、学園スポーツマンガとしてさほど目立たずにスタートしたものの、すぐに人気急騰。90年代中頃の連載終盤に至ってその絵や物語のテンションが凄いレベルに到達していると騒がれ、その展開にファンは毎週息を呑んでいた。その頃に『少年ジャンプ』をリアルタイムで読んでいた世代なら、あのクライマックスは忘れられない記憶だろう(ほら、あの伝説の山王戦!)。一方、先行して80年代に連載が始まった『AKIRA』がどれだけ世に巨大なインパクトを与えたか、それはもう繰り返さない。大友克洋さんがその『AKIRA』を描き始めたのがまさに28歳のことだった。『緊急特集 井上雄彦』と題した本誌特集が2008年。そして今回、大友克洋さん特集が決定。最初に浮かんだ企画は、大友さんが誰かもう一人のマンガ家と対談するページができないか、ということ。08年の井上特集は、上野の森美術館で開かれた『最後のマンガ展』がきっかけだった。今回の大友特集も『大友克洋GENGA展』がそのきっかけ、という共通点もある。二人は、それぞれ互いの作品をどう読んでいるだろうか。この顔合わせが実現したらきっと後に残るシーンになる──。その打診には、幸いすぐ良いお返事をいただくことができた。双方の日程が何とかまとまった某日。最初の挨拶からしばらく、お二人ともやはり互いの作品を良く読まれていたと分かる。交わされた言葉の中身は誌面に譲るが、ひとつ印象的なトピックを挙げるなら「絵が上手くなるとはどういう感覚か」という話題。いま最も「絵が上手い」マンガ家に数えられるだろうお二人はともに若い時期、大量に絵を描きながら画力が急激に伸びる経験をしている。その実感を語る中身は不思議と似通っていた。大友さんは、手塚治虫とその作品を敬愛してやまない。井上さんは10代の頃から大友作品に衝撃を受け何度も読み返したという。天才は、次の天才を刺激する。とすれば大友・井上作品に導かれた新しい天才がいつか現れるのだろう。でもその前に、これからふたりの新作マンガを読む楽しみはたっぷりある。『AKIRA』以来の新連載(!)を明らかにして「再起動」した大友さん、大作『バガボンド』連載を遂に再開した井上さん。共に決定的な仕事をしたのが28歳の頃としても、まだその先は見えない。その似通ったタイミングも天才ふたりの偶然の、でも幸福な一致だろう。個人的にも、かつて10代の頃に夢中になって読んだシーンを描いたその人が、それも二人揃って会話を交わす光景をまさか見られるとは思わず。この企画に関われたこと、そして何より多忙の中でこの機会を作っていただいたお二方に、ただ感謝です。 ●渡辺泰介(本誌担当編集)
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