【序章より】(抜粋)
本書は、墨家の思想を、先秦諸思想、とくに荀子のそれとの対比を念頭において分析したものである。
孔子以後、孟子以前の時期にその原型が成立した墨家の思想を戦国時代末期に成立した荀子の思想と対比しつつ論ずる根拠とその有効性については、行論のなかで明らかになるであろう。
戦国時代末期に儒家とならんで学団を形成し、社会における人間のありようを追求し、「世之顕学」(「韓非子」顕学)とされた墨家学派の開祖、墨子の姓名、生没年、生国等について、以下において論ずるが、「墨子」書中には、「墨」が姓とは明記されておらず、名前、翟としか明示されていない。墨子本人、その弟子たちが、すなわち墨家集団がそうした問題についてほとんど関心を示していないこと、そして示していないことそれ自体が、儒家思想と対比した場合の墨家思想の特色の一つであろうこと、むしろ儒家思想こそが特殊であることをあらかじめ述べておきたい。……これまでの墨家思想の分析は、兼愛上篇の思想を「弱者支持」、「双務倫理」の思想と理解したところから出発し、「墨子」書の文献批判もそれとの関連でなされている。そして、その結果、墨家思想は「弱者支持」の進歩的思想から専制帝国を支えるイデオロギーと化した、と評価されるのであるが、はたしてそうであろうか。それならば、「専制帝国」の成立とともに墨家は消滅した、という主張との整合性はいかにして可能になるのであろうか。われわれは、まず、兼愛上篇の主張するところを分析し、その基底に存在する人間把握をあらためて問題にしなければならない。
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