史記秦漢史の研究 在線電子書 圖書標籤: 秦漢史 日本漢學 史記秦漢史の研究 藤田勝久 日本秦漢史 曆史 漢學 日文著作
發表於2024-11-05
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http://www.kyuko.asia/book/b193775.html
【本書】より(抜粋)
中國古代史の研究は、今日では文獻史料と齣土資料を利用することが一般的な方法となっている。しかし基本となる『史記』を文獻テキストとして利用するためには、その當初の素材と編集をふまえた原形を理解する必要がある。本書は、こうした視點によって『史記』の史料的性格を考察し、歴史研究の基礎とする三部作の一つである。ここでは先人の研究や、齣土資料を手がかりとしながら、科學的な資料學として『史記』秦漢史料がどこまで史実をふまえているかを知ろうとした。そのうえで古代統一國傢と地域社會の再構成を試みた。中國の齣土資料には、『史記』の素材となっていない資料も多くみられる。そこで『史記』秦漢史では、司馬遷が利用していない齣土資料をふくめて、漢代までの文書・書籍のあり方と、社會背景を知る必要がある。またもう一つの問題として、歴史研究では齣土資料の釈文を準テキストのように利用するのではなく、簡牘それ自體の機能に即した資料の位置づけが必要である。拙著『中國古代國傢と社會システム』(汲古書院、二〇〇九年)は、こうした観點から、長江流域齣土資料を初歩的に考察したものである。また秦漢史の研究では、長江流域の齣土資料だけではなく、漢代西北の簡牘との比較や、中國のフィールド調査による考察も有益である。これによって『史記』史料の研究は、齣土資料の全體のなかで位置づけることができる。この『史記』研究と並行する戦國秦漢史の展望は、拙著『中國古代國傢と郡県社會』(汲古書院、二〇〇五年)でアウトラインを示している。・・・
本書では、『史記』秦漢史料を分析して、その史実を考察してきた。その結果、古代中國では戦國七國のように大きな地域區分があり、それは政治的にみて西方の秦文化の體製と、東方諸國の體製に分けることができる。また東方の楚は、南方の文化圏でもある。秦帝國の成立と滅亡、楚漢戦爭の時代は、こうした秦の體製(秦の社會システム)と楚の體製(楚の社會システム)を代錶とする異なる文化圏の対立といえる。つまり秦帝國の內部には、習俗や習慣が違う地域社會を組み込んでいる。それを細かくみれば、郡県製という製度のなかで、ともに県レベルの領域にある社會を基礎単位とするものであった。漢王朝の成立後は、これらを一つの政治體製と漢文化に同化してゆく過程ということができよう。したがって司馬遷が《太史公書》を著述した武帝期は、戦國時代から始まる地域社會の統閤に到達し、周辺にも郡県製を設置した時代である。このような體製は、いわば中國古代文明の成立といえるものであり、『史記』はその通史となっている。漢王朝の體製は、『史記』が完成したあとも前漢後半から後漢時代へと続いてゆくが、國傢と地域社會の基礎は、その歴史敘述に示されている。このように『史記』秦漢史料と齣土資料による研究は、司馬遷が描いた歴史敘述だけではなく、秦漢統一國傢と地域社會の実像に近づけると考えている。
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