中國史上はじめて科挙という社會的事象が定著し、士人の精神や人生に新たな影響を與えたのは唐代の三百年である。詩文をもって選抜する試験は、文學史に初めて新たな題材を提供しただけでなく、以後韆年にわたり、良きにつけ悪しきにつけてモデルとなった。科挙の歴史的展開と変遷を見るためにも、唐代の科挙文學の世界は重要なのである。ただ、話題は科挙だけにとどまらず、銓選(任官選考)や推挙を要請する士人の行動にも及んでいる。名利の世界への飛翔を願った唐代の知識人が、科挙と銓選という選抜のシステムにいかに立ち嚮かい、その得喪の結果から生じた思いをいかに文字に託したか、さらにまた、幸いに官人としての身分を得ても、およそ順調な官僚生活とは無縁だった大多數の士人たちが、文章に託してどんなメッセージを歴史に書き込んだのかを見ようとした。
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